歴史の余白

内外の埋もれた歴史を再発見するブログ

〆私家版琉球国王列伝

私家版琉球国王列伝(連載最終回)

十六 尚泰王〈続〉 前回見たように、薩摩藩主・島津斉彬の急死は琉球内政にも大きく影響した。斉彬の代理人的な役割を果たしていた牧志朝忠に反発する勢力が動き出したのである。1859年、牧志ら親薩摩派は三司官選挙での買収など数々の汚職の罪で一斉検…

私家版琉球国王列伝(連載第15回)

十六 尚泰王(1843年‐1901年) 尚泰王は先代の父尚育王が若くして没したことから、1848年、幼少で即位した。そのため、治世初期の欧米列強との相次ぐ条約締結で主導的役割を果たすことはなかった。 1850年代に琉球が締結した一連の条約のう…

私家版琉球国王列伝(連載第14回)

十五 尚育王(1813年‐1847年) 琉球にも西洋列強の手が及び始めた19世紀前半の時期に登位した尚育王は、前回も見たように、父王が晩年精神障碍のため執務不能となったため、10代から摂政として政務を執っていた。 在位中は、来航する列強との折…

私家版琉球国王列伝(連載第13回)

十四 尚灝王(1787年‐1834年) 先代の尚成王が幼年のまま没すると、叔父の尚灝〔しょうこう〕が後を継ぐこととなったが、以後の琉球王統は彼の子孫で確定している。1804年の即位時は10代であったが、その後30年にわたり在位し、尚穆王以来の…

私家版琉球国王列伝(連載第12回)

十三 尚穆王(1739年‐1794年)/尚温王(1784年‐1802年)/尚成王(1800年‐1804年) 14代尚穆〔しょうぼく〕王は、父の先代尚敬王が死去した時はまだ10代と若く、すでに退官していた蔡温が薩摩藩の命により引き続き実質的な宰相…

私家版琉球国王列伝(連載第11回)

十二 尚益王(1678年‐1712年)/尚敬王(1700年‐1752年) 12代尚益王は30年間在位した祖父尚貞王の後を受けて即位したが、在位わずか2年で死去し、子の尚敬が継いだ。尚敬王の治世は大飢饉による被害という困難の中で始まるが、尚敬の…

私家版琉球国王列伝(連載第10回)

十一 尚貞王(1646年‐1709年) 11代尚貞王は先代の父尚質王から比較的安定した王権を承継した。ただ、王宮首里城は先代の1660年に焼失し、まだ再建中だったため、王家の冠婚葬祭場であった大美御殿で即位式を執り行うというハプニングもあった…

私家版琉球国王列伝(連載第9回)

十 尚豊王(1590年‐1640年)/尚賢王(1625年‐1647年)/尚質王(1629年‐1668年) 薩摩による侵攻・征服当時の尚寧王は世子を残さず、1620年に苦難の治世を終えて没した翌年、王統は再び本家筋に戻り、5代尚元王の孫に当たる尚…

私家版琉球国王列伝(連載第8回)

九 尚寧王(1564年‐1620年) 先代尚永王は嫡男がないまま没したため、後継には甥(妹の子)の尚寧が就くこととなった。尚寧は第二尚氏王朝3代尚真王の長男尚維衡を祖とする大名小禄御殿の4世に当たる王族である。ここで王統が切り替わることになる…

私家版琉球国王列伝(連載第7回)

八 尚元王(1528年‐1572年)/尚永王(1559年‐1589年) 通算78年に及んだ尚真・尚清父子王の治世が1555年の尚清王の死をもって終焉すると、大勢いた王子たちの間での王位継承抗争が起きるも、翌年、先代から後継指名を受けていた次男…

私家版琉球国王列伝(連載第6回)

七 尚真王(1465年‐1527年)/尚清王(1497年‐1555年) 前回の末尾で見たとおり、尚真王は生母宇喜也嘉の差配により、叔父を退けて12歳ほどで3代国王に就いた経緯から、治世初期には宇喜也嘉が実権を持ったと見られる。 しかし、彼は若く…

私家版琉球国王列伝(連載第5回)

六 尚円王(1415年‐1476年)/尚宣威王(1430年‐1477年) 第二尚氏を創始した尚円王は即位以前は金丸といい、伊是名島の農民の出とされる。しかし、若い頃、島を出て本島へ渡り、王子時代の尚泰久王の家臣となり、その即位にも貢献、以後は…

私家版琉球国王列伝(連載第4回)

五 尚徳王(1441年‐1469年) 尚徳王が父尚泰久王から円滑に王位を継承した時は、まだ20歳そこそこであったが、彼は間もなく強い指導力を発揮し始める。彼の時代に東南アジアの当代有力な港市国家マラッカとの貿易を開始し、琉球を東アジアの港市国…

私家版琉球国王列伝(連載第3回)

三 尚金福王(1398年‐1453年) 尚金福王は先代の甥尚思達王が継嗣を残さず没したために、王位に就くことになった。彼の四年ほどの在位中の事績としては、明使を迎えるために、港として整備した那覇と王城のある首里を結ぶ堤道として長紅堤を築造した…

私家版琉球国王列伝(連載第2回)

一 尚思紹王(1354年‐1421年)/尚巴志王(1372年‐1439年) 尚思紹・尚巴志父子は、琉球を初めて統一した第一尚氏王朝の創始者とされているが、厳密には父尚思紹王の代では統一は完成しておらず、統一は2代目尚巴志王の功績である。尚思紹…

私家版琉球国王列伝(連載第1回)

序 近年の沖縄県の話題と言えば「基地問題」が圧倒的であり、王国時代の琉球史が本土で顧みられることはほとんどない。当の沖縄でも王国時代は過去の歴史となり、日本領土の一部たる「沖縄県」であることは当然の前提となっているように見える。 しかし、琉…