歴史の余白

内外の埋もれた歴史を再発見するブログ

クルド人の軌跡

クルド人の軌跡(連載第6回)

二 クルド人の全盛 アイユーブ朝の短い天下 サラーフッディーンが創始したアイユーブ朝は、彼の死後もエジプトを基盤に版図を拡大し、シリア、パレスティナ、イエメン西部にもまたがる超域的な領域国家に成長した。これはクルド人が世界史の中で主役を演じた…

クルド人の軌跡(連載第5回)

二 クルド人の全盛 サラーフッディーンの天下取り 西洋社会でもサラディンと短縮転訛して記憶されているアイユーブ家のサラーフッディーンはキリスト教世界の第三回十字軍を撃退した功績で知られ、西洋社会でも最も歴史的な知名度の高いクルド人であるが、十…

クルド人の軌跡(連載第4回)

二 クルド人の全盛 アイユーブ家の台頭 中世におけるクルド人地域首長国の中で最も早くに形成されたシャッダード朝はアルメニア西部のドゥヴィンを首都として長く治めていたが、ドゥヴィンは1064年にセルジューク朝に占領され、以後のシャッダード朝は同…

クルド人の軌跡(連載第3回)

一 クルド人の形成 イスラーム化と地域首長国の形成 中世におけるクルド人の活動が史料に現れるのは、10世紀半ばである。それまでクルド人は国家的なまとまりを持たず、部族ごとに遊牧生活を営んでいたと考えられるが、10世紀になると地域ごとにいくつか…

クルド人の軌跡(連載第2回)

一 クルド人の形成 民族揺籃期 初回でも見たように、クルド人の発祥は謎に包まれているが、クルド人自身の伝承によれば、クルド人はメディア人の末裔であるとされる。メディア人はイラン北西部を拠点とし、紀元前8世紀から同6世紀にかけて強力な王国を形成…

クルド人の軌跡(連載第1回)

一 クルド人の形成 謎に包まれた発祥 クルド人は、国家を持たない世界最大民族集団(総人口約3000万人)とも呼ばれるが、それは近現代において、ごく短期間を除き、独自の国民国家を形成することがないまま、トルコ、シリア、イラク、イランを中心とした…