歴史の余白

内外の埋もれた歴史を再発見するブログ

2015-10-01から1ヶ月間の記事一覧

アフガニスタン―引き裂かれた近代史(1)

序説 「テロの世紀」となってしまった21世紀は9・11テロ事件への報復としてアメリカ主導で断行された対アフガニスタン戦争で幕を開けた。同戦争が一段落して十数年を経て、火種はより西の中東へ遷移したため、アフガニスタンへの世界の注目は失われたか…

私家版足利公方実紀(連載第1回)

序 14世紀から16世紀後半にかけて、周知のように、日本では京都に武家政権機構である幕府と天皇の朝廷とが並立するという独異な時代―いわゆる室町時代―を経験した。言わば軍事政権と宮廷が並存したわけで、しかも幕府も基本的に世襲制であったから、一種…

イエメン―忘れられた近代史(10)

後記 サレハ政権崩壊後に勃発したイエメン新内戦はまだ歴史でなく、現在進行中の事象であるので、後記として言及するにとどめざるを得ない。こたびの内戦は南北間の内戦ではなく、サレハ政権を継いだハーディ政権とザイド派武装勢力フーシ派との間のものであ…

イエメン―忘れられた近代史(9)

八 「アラブの春」から内戦へ 1994年の南北内戦に勝利し、統一イエメンの支配者としての地位を確実にしたサレハ大統領は、1999年大統領選挙で三選を果たした。事前の工作により、この選挙での候補者はサレハ一人だけの出来レースであった。 調子づい…

イエメン―忘れられた近代史(8)

七 統一後の混乱 想定以上にスムーズに実現したイエメン統一であったが、それは滑り出しからつまずく。まずは、統一プロセス渦中で発生した湾岸戦争で、サレハ政権がクウェートを侵攻・占領したイラクを支持するという誤った選択をしたことである。 このよう…

イエメン―忘れられた近代史(7)

六 イエメン統一まで 両イエメンは、ほぼ同一・同種民族間のイデオロギー的分断国家という点では、同じ冷戦期に現出した東西ドイツや南北朝鮮と類似していたが、それらに比べれば、ともに社会主義的志向性を持つ両イエメンのイデオロギー対立の溝はさほど深…