歴史の余白

内外の埋もれた歴史を再発見するブログ

2016-08-01から1ヶ月間の記事一覧

仏教と政治―史的総覧(連載第17回)

六 中国周辺国家と仏教 ベトナム諸王朝と仏教 中国で独自の発展を遂げた仏教―中国仏教―は、中国を新たな起点として周辺国へ伝播していくが、その最初の地は南部で接するベトナム(ただし、カンボジアとの結びつきが強い中・南部は除く)であった。 もっとも…

仏教と政治―史的総覧(連載第16回)

五 中国王朝と仏教 仏教の完成と衰退 道教を国教としたため、仏教の地位が後退した唐の時代ではあったが、末期を除いて仏教が弾圧されることはなく、唐の時代は中国仏教の完成期と言ってよい時代であった。ただし、南北朝時代に芽生えた末法思想の系譜を引く…

日本語史異説―史的総覧(連載最終回)

十二 悲しき言語―日本語 現存言語で、1億人を超える使用者を持ちながら、一国でしか公用語として用いられていない言語は日本語くらいしかない。*インドネシア語も類例に属するが、使用者の多くは第二言語としてのものである。その意味で、日本語は世界最大…

仏教と政治―史的総覧(連載第15回)

五 中国王朝と仏教 廃仏と崇仏の狭間で 南北朝時代から五代十国時代にかけての中国仏教の特徴として、為政者による廃仏と崇仏の間を揺れ動いたことが挙げられる。この時期における大規模な廃仏は四度あるが、その初例は北朝北魏の3代皇帝太武帝による446…

日本語史異説―悲しき言語(連載第22回)

十一 情報社会と通俗日本語 敗戦により帝国言語の時代が終焉すると、日本語は再び日本列島の「島言葉」の地位に戻っていったが、標準語としての日本語の骨格はすでに完成されており、戦前と戦後でラングとしての日本語に根本的な相違があるわけではない。し…

仏教と政治―史的総覧(連載第14回)

五 中国王朝と仏教 仏教の伝来と受容 後代、東アジア全域への仏教伝来の拠点となる中国の仏教は、シルクロード経由で西域から伝来したものであることは確実であるが、伝来の正確な日付までは確定していない。考古学的な証拠によると、後漢時代の西暦1世紀代…

日本語史異説―悲しき言語(連載第21回)

十 帝国言語の時代 標準語という形で、さしあたり国内の方言抑圧に成功した日本語は、続いて海外に進出していく。これは、明治政府の帝国主義的膨張に伴う言語輸出として行なわれた。その嚆矢となったのは日清戦争勝利の結果、獲得した台湾であった。*琉球…