歴史の余白

内外の埋もれた歴史を再発見するブログ

2016-03-01から1ヶ月間の記事一覧

日本語史異説―悲しき言語(連載第13回)

四 倭語の形成⑥ 前回まで、倭語の形成過程で重要な役割を果たした流入言語として伽耶語と百済語とを見たが、実はもう一つ、高句麗語がある。前回見たとおり、百済語は高句麗語の百済方言という性格を持ったが、高句麗語そのものも日本列島に流入している。 …

日本語史異説―悲しき言語(連載第12回)

四 倭語の形成⑤ 倭語の形成に際して、伽耶語に続き少し遅れて流入してきたのが百済語である。これは5世紀頃から百済がライバル高句麗への対抗上、倭に接近し、百済‐倭の関係が緊密化したことで、百済人の渡来者が増大したためである。 その点、筆者は5世紀…

仏教と政治―史的総覧(連載第4回)

一 初期仏教団と政治 ヴァッジ国と根本分裂 釈迦没後、マガダ国の首都ラージャグリハで仏教史上最初の宗教会議である第一回結集を大檀越として後援したのは、かのアジャータシャトル王であったと言われる。この時は、釈迦十大弟子の一人マハーカーシャパを座…

仏教と政治―史的総覧(連載第3回)

一 初期仏教団と政治 マガダ国と仏教 前回も触れたように、釈迦が布教に力を注いだマガダ国があった地方は、当時インドにおける政治経済的な中心地であったが、一方で、バラモン教的身分秩序が弛緩している地域としても知られていた。釈迦の原初仏教団が目を…

日本語史異説―悲しき言語(連載第11回)

四 倭語の形成④ 古墳時代以降の倭語形成において先行的な基盤言語となった伽耶語とはどんな言語だったのだろうか。残念ながら伽耶語は古代に絶滅言語となり、系統的な文字史料は残されていない。ただわずかに朝鮮三国の歴史を叙述する『三国史記』で、「旃檀…

仏教と政治―史的総覧(連載第2回)

一 初期仏教団と政治 原初仏教団の創立と布教 シャーキャ国のガウタマ・シッダールタ公子、すなわち釈迦の出家動機の宗教的な説明としてよく知られている逸話として、「四門出遊」の伝承がある。すなわち公子が居城の東西南北の四つの門から郊外に出かけた際…

日本語史異説―悲しき言語(連載第10回)

四 倭語の形成③ 倭語の形成において重要な役割を果たした基盤言語として、伽耶語と百済語があると考えられるが、このうち時代的に最初に到達したのは伽耶語であった。というのも、古墳文化を先駆的にもたらしたのは伽耶人だったからである(詳しくは、拙稿参…

仏教と政治―史的総覧(連載第1回)

序 シャーキャ国 キリスト教、イスラーム教と並び世界三大宗教の一つに数えられる仏教は、他の二つの宗教に比べ、俗世間から離脱した脱政治的なイメージが強いが、仔細に見れば決してそんなことはないことがわかる。特に、南アジアから東アジアにかけてのア…

アフガニスタン―引き裂かれた近代史(16)

五 9・11事件とその後 カルザイ政権の10年 9・11事件後の有志連合軍の攻撃でターリバーン政権が崩壊すると、国連の支援―実質は米国の影響下―で、暫定行政機構が設立され、ハミド・カルザイが議長に就任した。 カルザイはザーヒル・シャー国王を支持…

私家版足利公方実紀(連載最終回)

二十三 足利義尋(1572年‐1605年) 足利義尋〔ぎじん〕は最後の室町将軍足利義昭の庶長子であるが、義昭は正室を持たなかったため、義尋が嫡男扱いとなる。だが、彼は1歳の時、父が信長に京都を追放され、幕府が崩壊した後、信長の人質となったうえ…