歴史の余白

内外の埋もれた歴史を再発見するブログ

2015-08-01から1ヶ月間の記事一覧

イエメン―忘れられた近代史(4)

三 南イエメンの独立 南イエメンは、北イエメン独立後も、アデン植民地と周辺の保護領から成る英国支配下にあった。56年のスエズ動乱で英国がスエズ運河権益を喪失すると、南イエメンの中心港湾都市アデンは石油精製の拠点として重視されるようになる。 そ…

イエメン―忘れられた近代史(3)

二 共和革命から内戦へ イエメン王国のアラブ国家連合への加盟は、軍部を中心にナセルに傾倒するアラブ民族主義者を勢いづかせ、前近代的な王制打倒への動きに弾みをつけた。その点で、連合への加盟はザイド派王朝にとって自らの命脈を縮める選択であった。 …

イエメン―忘れられた近代史(2)

一 北イエメンの独立 イエメンの近代史は、他の多くの中東諸国と同様、オスマン・トルコの支配を抜け出した時点に始まる。イエメンの場合は、1918年である。時のザイド派イマーム、ヤフヤ・ムハンマド・ハミド・エッディンはすでに13年のオスマン帝国…

イエメン―忘れられた近代史(1)

序説 目下中東ではイラクとシリアのほか、アラビア半島南端のイエメンでも政府軍と反政府武装力の内戦に隣国サウジアラビアを主力とする周辺国―その背後には米欧がある―とイランが干渉する同様の構図が展開されている。 しかし、イエメンの状況はイラクとシ…

イラクとシリア―混迷の近代史(18)

[E:seven] シリア内戦 [E:night]内戦の膠着 シリアにおける「春」は2011年の初頭から静かに始まった。シリアには先行した「ダマスカスの春」の余波が残されており、バッシャール・アサド政権も民主化を一定は受け入れ、野党とも対話する姿勢を示していた…