歴史の余白

内外の埋もれた歴史を再発見するブログ

2013-01-01から1年間の記事一覧

天皇の誕生・目次

本連載は終了致しました。下記目次各ページ(移転元ブログへリンク)より個別記事をご覧いただけます。 プロローグ p1 第一章 三人の「神冠天皇」 p2 p3 (1)二人の「初代天皇」(2)崇神天皇と応神天皇(3)応神天皇と八幡神(4)応神天皇と神功…

天皇の誕生(連載最終回)

エピローグ 本連載では「国、皆王を称し、世世統を伝う」(『後漢書』倭国伝)という分国状況の中、朝鮮半島の加耶にルーツを持つ勢力が九州を経由して畿内に建てた一地域王権が、やがて百済系渡来人勢力に簒奪された後、曲折を経て全国的王朝に発展し、天皇…

天皇の誕生(連載第51回)

第十一章 持統女帝の役割 (6)「天皇」の制度的確立 立太子の制度化 昆支朝では5世紀後葉の開朝以来、大王位継承をめぐる抗争が絶えず、6世紀末にはそうした抗争を巧みに利用した臣下の蘇我氏に王権を簒奪され、蘇我朝に取って代わられた。その蘇我朝か…

天皇の誕生(連載第50回)

第十一章 持統女帝の役割 (5)最初のフェミニスト 持統フェミニズム 7世紀代の女性を「フェミニスト」と呼ぶことはいささか時代錯誤的であり、躊躇も覚えるが、持統の思想の根底には女性性を協調・讃美するある種のフェミニズムがあったと思われるのであ…

天皇の誕生(連載第49回)

第十一章 持統女帝の役割 (4)複雑な歴史観 天智・天武崇拝 『書紀』は持統天皇が自ら執筆に関わったものでないことは明らかだが、その基本線には持統自身の歴史観がまさに影のごとく投影されていると考えられる。 その「持統史観」の核を成すのは、天智・…

天皇の誕生(連載第48回)

第十一章 持統女帝の役割 (3)歴史‐神話の創造 天皇中心の国史 持統天皇が夫・天武天皇から継承し、仕上げを試みた重要な事業に国史の編纂がある。天武はすでに治世10年の節目に当たり、帝紀及び上古の諸事の記録の校定を命じ、天智天皇の子・川島皇子を…

天皇の誕生(連載第47回)

第十一章 持統女帝の役割 持統天皇は、一般的に夫・天武天皇の遺志を継いで律令制を完成させた“中継ぎ”の天皇と脇役的にとらえられているが、彼女の果たした役割はその程度のことにとどまるものであったか。 (1)生い立ち 「乙巳の変」の申し子 正史上の第…

天皇の誕生(連載第46回)

第十章 天智天皇と天武天皇 (4)天武天皇の実像 兄の同志 天智天皇の同母弟で、後に第40代天武天皇となる大海人皇子―逆に天武を天智の兄とする説もかねてより存在するが、ここでは立ち入らない―の動向が『書紀』で最初に確認されるのは、孝徳政権末期、…

天皇の誕生(連載第45回)

第十章 天智天皇と天武天皇 (3)後期天智政権 甲子の宣 筑紫遷都失敗の後、天智天皇らが筑紫をいつどのように撤収したのかが『書紀』の記述では今一つはっきりしない。ただ、天智は663年9月に百済から救援軍を撤退させた後、翌664年2月9日には「…

天皇の誕生(連載第44回)

第十章 天智天皇と天武天皇 (2)前期天智政権 虚構の「斉明天皇」 正史は、孝徳天皇死去の後、孝徳の姉で中大兄の生母でもある宝皇女が「第37代斉明天皇」として即位したとする。この人は正史上、すでに乙巳の変の前に夫・舒明天皇の死を受けて「皇極天…

天皇の誕生(連載第43回)

第十章 天智天皇と天武天皇 後昆支朝初期を代表する天智・天武の兄弟天皇。しかし乙巳の変でも活躍した実力者・中大兄(天智)が668年まで天皇に即位しなかったとする正史は真実であろうか。また壬申の乱の勝者となる天智天皇の実弟・天武天皇は『万葉集…

天皇の誕生(連載第43回)

第十章 天智天皇と天武天皇 後昆支朝初期を代表する天智・天武の兄弟天皇。しかし乙巳の変でも活躍した実力者・中大兄(天智)が668年まで天皇に即位しなかったとする正史は真実であろうか。また壬申の乱の勝者となる天智天皇の実弟・天武天皇は『万葉集…

天皇の誕生(連載第42回)

第九章 乙巳の変と「後昆支朝」 (4)改新的復古 孝徳政権の成立 乙巳の変によって軽皇子が王位に就いて開始した新政権の施策は正史・通説上、「大化の改新」と呼ばれ、律令国家の建設へ向けた最初の一歩として高く位置づけられてきた。 しかし、乙巳の変の…

天皇の誕生(連載第41回)

第九章 乙巳の変と「後昆支朝」 (2)真の政変首謀者 中臣鎌子と軽皇子 内では戒厳体制の閉塞、外では百済のくびきがのしかかる中、入鹿大王体制は早くも行き詰まりを見せていた。こうした中で、小さな謀議の芽が生じた。その中心にいたのが、平安朝で栄華…

赤穂浪士事件起承転結(連載第2回)

起:高家旗本と地方外様大名 まずはじめに、本連載では殿中刃傷事件としての「赤穂事件」とその後、赤穂藩旧臣による「赤穂浪士事件」を用語の上で便宜上分けることを前提とする。そのうえで、発端を成す赤穂事件は事件を起こした浅野内匠頭・浅野長矩と刃傷…

赤穂浪士事件起承転結(連載第1回)

小序 今日は赤穂浪士による吉良邸討ち入り事件の310周年である。本来なら300周年の2003年1月30日(旧暦では元禄十五年十二月十四日)のほうが時宜にかなっていたであろうが、2003年当時の筆者はウェブ初心者で、ブログという言葉すら知らな…

天皇の誕生(連載第40回)

第九章 乙巳の変と「後昆支朝」 正史・通説上は、“逆臣”蘇我氏を打倒した「大化の改新」の名で上代における明治維新級の革新として称賛されてきた政変は、果たして真に「改新」の名に値するような革命だったのであろうか。 (1)政変までの経緯 戒厳体制 6…