歴史の余白

内外の埋もれた歴史を再発見するブログ

2019-08-01から1ヶ月間の記事一覧

ユダヤ人の誕生(連載第3回)

Ⅰ ユダヤ民族の原郷 (2)アブラハムの出身地 旧約では、民族始祖アブラハムの出身地を「カルデアのウル」とする。このウルとは、三代にわたってシュメール人の都市王国が栄えたメソポタミア文明圏の由緒ある故地ウルと同一視されている。 アブラハム(旧名…

ユダヤ人の誕生(連載第2回)

Ⅰ ユダヤ民族の原郷 (1)ユダヤ人とユダヤ民族 「ユダヤ人」という語は、複合的な用語である。そこには、宗教としてのユダヤ教を信じ実践する者、要するに「ユダヤ教徒」という含意とともに、ユダヤ教を創出した民族としてのユダヤ人という含意が二重に込…

シチリアとマルタ―言語の交差点(連載第2回)

一 シチリアとマルタの先史/最初期言語 先史時代とは、最も端的に定義づければ、文字が発明される以前の時代をいうから、文字化されない口頭言語であった先史言語を特定・再構することは不可能であるが、推定することはできなくない。シチリアとマルタの場…

ユダヤ人の誕生(連載第1回)

序論 民族としてのユダヤ人は、おそらく日本人と並んでその出自が神話に満ちた民族である。それは日本人の出自が『記紀』に見える日本神話に依拠していることと似て、ユダヤ人の出自がユダヤ教聖典である『旧約聖書』(以下「旧約」と略す)に依拠しているこ…

松平徳川女人列伝(連載第1回)

序 日本の近世で最も持続的な成功を収めた一族と言えば、松平=徳川氏であろう。三河の山間の土豪から出たほぼ無名の一族が最終的に天下を治める最高執権者にのし上がるに当たっては、歴代当主の軍事的・政治的な手腕が寄与したことは間違いないが、一族が断…