歴史の余白

内外の埋もれた歴史を再発見するブログ

〆アフガニスタン―引き裂かれた近代史

アフガニスタン―引き裂かれた近代史(16)

五 9・11事件とその後 カルザイ政権の10年 9・11事件後の有志連合軍の攻撃でターリバーン政権が崩壊すると、国連の支援―実質は米国の影響下―で、暫定行政機構が設立され、ハミド・カルザイが議長に就任した。 カルザイはザーヒル・シャー国王を支持…

アフガニスタン―引き裂かれた近代史(15)

五 9・11事件とその後 9・11事件と対米戦争 内戦中は米国からも支援を受けたムジャーヒディーンの外国人義勇戦士から出たビン・ラーディンを指導者に戴くアル・カーイダが過激な反米活動に転じた契機は、91年のイラク戦争(湾岸戦争)で、サウジアラ…

アフガニスタン―引き裂かれた近代史(14)

[E:four] イスラーム主義の台頭 [E:night]ターリバーンの支配 ターリバーンの起源については半ば伝説化されており、詳細は不明であるが、ムジャーヒディーンから派生してきたことは間違いない。その初代最高指導者ムハンマド・オマルはパシュトゥン系元ムジ…

アフガニスタン―引き裂かれた近代史(13)

[E:four] イスラーム主義の台頭 [E:night]軍閥連合政権の破綻 1992年4月に社会主義のPDPA政権が具体的な受け皿のないまま崩壊すると、イスラーム系反政府武装勢力ムジャーヒディーンが首都に殺到し、無政府騒乱状態に陥った。前述したように、同勢力は…

アフガニスタン―引き裂かれた近代史(12)

三 社会主義革命と内戦 (8)ソ連軍撤退から政権崩壊へ 1979年のソ連軍侵攻以来、PDPA政権は本来は非主流的な旗派が主導することになったが、最初のバブラク・カルマル政権は優柔不断な性格が強く、内戦終結への道筋を描くことはできなかった。他方、ソ…

アフガニスタン―引き裂かれた近代史(11)

[E:three] 社会主義革命と内戦 [E:night]内戦の長期化 1978年の社会主義革命以前、アフガニスタン史上近代主義的な大改革は王政時代のアマヌッラー国王による改革、共和革命後のダウード政権による改革と二度あったが、いずれもイスラーム保守層からの強…

アフガニスタン―引き裂かれた近代史(10)

[E:three] 社会主義革命と内戦 [E:night]革命からソ連軍事介入へ アフガニスタンの1973年共和革命から78年の社会主義革命までの過程を見ると、ロシア革命の経過とよく似ている。第一次73年革命がロシアでは帝政を打倒した2月革命に相当するものだと…

アフガニスタン―引き裂かれた近代史(9)

三 社会主義革命と内戦 [E:night]1978年社会主義革命 前回触れたように、1973年の共和革命はイスラーム保守勢力を後退させ、マルクス‐レーニン主義の人民民主党(以下、PDPAと略す)が台頭するきっかけを作った。しかし、共和革命を主導したダーウー…

アフガニスタン―引き裂かれた近代史(8)

[E:two] 独立アフガニスタン [E:night]1973年共和革命 1963年、ザーヒル・シャー国王は当時のアフガニスタンでは急進的すぎる近代化改革を推進していた従兄のダーウード首相を追放して、改めて親政を開始するが、それによって近代化路線が全面撤回さ…

アフガニスタン―引き裂かれた近代史(7)

[E:two] 独立アフガニスタン [E:night]ザーヒル・シャー時代 1933年にモハンマド・ナーディル・シャーが暗殺された後を受けて、新国王に即位したザーヒル・シャーの40年に及んだ治世は大きく三期に分けることができる。 その第一期は、19歳での即位…

アフガニスタン―引き裂かれた近代史(6)

[E:two] 独立アフガニスタン [E:night]モハンマド・ナーディル・シャーの登場 1929年の反乱で、アマヌッラー国王を打倒して政権を掌握したのは、タジク族出身のハビーブッラー・カラカーニーであったが、アフガン軍の脱走兵出身と言われる彼は冒険主義者…

アフガニスタン―引き裂かれた近代史(5)

[E:two] 独立アフガニスタン [E:night]アマヌッラー国王の「社会革命」 1919年、電撃クーデターで政権を掌握したアマヌッラー・ハーンがまず着手したのは、英国からの外交的自立であった。そこで、彼は5月、英国に対してジハードを宣言し、戦争を開始し…

アフガニスタン―引き裂かれた近代史(4)

[E:one] 「保護国」アフガニスタン 第二次アングロ‐アフガン戦争後のアフガニスタンは、英国の保護国として再起することとなり、その最初の指導者が英国から王として認証されたアブドゥル・ラフマーン・ハーンであった。彼は敵対していた前首長の従兄弟であ…

アフガニスタン―引き裂かれた近代史(3)

零 曖昧な近代の開始 第一次アングロ‐アフガン戦争 バーラクザイ朝アフガニスタン首長国に対する英国の第一次戦争で前面に出てきたのは、当時英国のアジア侵略の先兵であった東インド会社軍であった。非正規の傭兵組織とはいえ、インド人のセポイを主力に強…

アフガニスタン―引き裂かれた近代史(2)

零 曖昧な近代の始まり バーラクザイ朝の成立 アフガニスタンに関して近代史を語る難しさは、いつから近代が始まるのかが曖昧なことである。いちおう、現代アフガニスタンにおいて最大勢力―とはいえ、その比率は50パーセント前後―であるイラン系民族パシュ…

アフガニスタン―引き裂かれた近代史(1)

序説 「テロの世紀」となってしまった21世紀は9・11テロ事件への報復としてアメリカ主導で断行された対アフガニスタン戦争で幕を開けた。同戦争が一段落して十数年を経て、火種はより西の中東へ遷移したため、アフガニスタンへの世界の注目は失われたか…