歴史の余白

内外の埋もれた歴史を再発見するブログ

私家版アイヌ烈士列伝

私家版アイヌ烈士列伝(連載第5回)

五 ハウカセ(生没年不詳) シャクシャインと同時代、シャクシャインとは全く異なるタイプの烈士がいた。石狩川流域を本拠地とし、その勢力圏が南はオタルナイ(小樽)、北はマシケ(増毛)方面にも及んだと言われる惣乙名ハウカセである。和人から「石狩の…

私家版アイヌ烈士列伝(連載第4回)

四 シャクシャイン(?‐1669年) 16世紀半ばのアイヌ‐和人勢力間で結ばれた講和協定「夷狄の商舶往還の法度」により、ひとまずアイヌと和人の間の紛争は沈静化し、その後の一世紀余りは平和な状態が続くが、協定はアイヌを東西の勢力に大きく分断する…

私家版アイヌ烈士列伝(連載第3回)

三 チコモタイン(生没年不詳)/ハシタイン(生没年不詳) アイヌ烈士と言えば、和人勢力との戦いで活躍した武闘派人物に偏る傾向を否めないが、逆に、和人勢力との和平で功績のあった人物も一種の烈士に含めてみたい。そうした場合、1550年(異説あり…

私家版アイヌ烈士列伝(連載第2回)

二 タナカサシ(?‐1529)/タリコナ(?‐1536) コシャマインの戦いの後、鎮定に功労のあった蠣崎氏の渡党首領としての地位が明瞭になったが、まだアイヌ側との交易利権をめぐる正式な協定もなく、アイヌ側では蠣崎氏は相変わらずある種の侵略者と…

私家版アイヌ烈士列伝(連載第1回)

序 アイヌ民族は、その歴史を通じて、国家やそれに類する政治機構を形成せず、かつ部族的な連合体を形成することもなく、コタンと呼ばれる通常は10戸未満から成る小村単位の生活様式を維持していた。コタンは父系集団によって統制され、その長はコタンコロ…