歴史の余白

内外の埋もれた歴史を再発見するブログ

パレスティナ十字軍王国史話

パレスティナ十字軍王国史話(連載第9回)

第8話 十字軍国家とアッコ包囲戦 歴史上、「アッコ包囲戦」と呼ばれる戦いは、中世から近世にかけて9回も起きているが、そのうちの6回がパレスティナ十字軍国家の時代のものである。アッコは現在はイスラエル北部の西ガリラヤ地方の港湾都市であり、歴史…

パレスティナ十字軍王国史話(連載第8回)

第7話 コンラート1世暗殺事件 パレスティナ十字軍王国女王イザベル1世の二番目の婿モンフェラート侯コンラート1世が共同国王に即位する前に暗殺された事件は、流血沙汰が珍しくなかった中世における未解決殺人事件の一つである。 事件の外形的な経緯は、…

パレスティナ十字軍王国史話(連載第7回)

第6話 政略婚の最果て フランス本国では、女子の王位継承権を否定するフランク族の古法サリカ法が援用され、女王を輩出することは王制史上一度もなかったが、本国では地位が低かった十字軍騎士の子孫が王家となったパレスティナ十字軍王国では円滑な王位継…

パレスティナ十字軍王国史話(連載第6回)

第5話 エルサレム陥落へ ハンセン病を負いながらも、英明で気概もあったボードゥアン4世が早世すると、その後継に定められ、すでに共同国王の座にあった姉シビーユの子で甥に当たるボードゥアン5世が単独統治を開始したが、10歳に満たない少年のうえ、…

パレスティナ十字軍王国史話(連載第5回)

第4話 「仮面」の英主ボードゥアン4世 その200年弱の歴史の中で、あまり有能な王を輩出することのなかったパレスティナ十字軍王国であったが、例外的に称賛されているのは、ボードゥアン4世である。4世は、女王メリザンドの孫に当たる。 父のアモーリ…

パレスティナ十字軍王国史話(連載第4回)

第3話 十字軍王国と騎士団 パレスティナ十字軍王国の王家を頂点とする支配層はフランス人騎士であったが、その人口はごく少数であった。というのも、十字軍戦士の大半は戦争終結後、気候的にも合わない中東の地を離れて本国へ帰還していき、少数の戦士とそ…

パレスティナ十字軍王国史話(連載第3回)

第2話 女王メリザンド パレスティナ十字軍王国は「王国」とはいえ、実態はフランス貴族の在外領地に近いものであったため、王権の継続性の担保が弱く、たびたび王統が変わっている。男性権力も脆弱であり、しばしば実権を持つ共治女王を輩出した。その最初…

パレスティナ十字軍王国史話(連載第2回)

第1話 十字軍四人衆 1095年に時のローマ教皇ウルバヌス2世の呼びかけにより、キリスト教の聖地エルサレムをイスラーム勢力から奪回することを目指して開始された第一回十字軍運動は宗教的熱狂に駆られた集団的運動であり、特定の際立ったヒーローを輩…

パレスティナ十字軍王国史話(連載第1回)

序 パレスティナ十字軍王国は、第一回十字軍の活動の結果、エルサレムを占領した十字軍によって建国されたキリスト教国家である。同時期に中東レバント地域に建国された四つの十字軍国家の一つと紹介されることもあるが、その200年近い持続性と国家として…