歴史の余白

内外の埋もれた歴史を再発見するブログ

2015-02-01から1ヶ月間の記事一覧

イラクとシリア―混迷の近代史(4)

[E:two] クルド人問題 イラクとシリアの近代史を考える上で見落とせないのは、クルド人問題である。クルド人は、イラク・シリア近代史の影の主役である。元来、クルド人は非アラブ系(イラン系)のイスラーム勢力として、中世には十字軍戦争の英雄であるサラ…

関東通史―中心⇔辺境(11)

十二 江戸開府まで 後北条氏が関東を支配した時代は、ほぼ織豊政権の時代に相当する。この時代の特徴は幕府が存在しなかったことである。織豊両氏ともに、室町幕府の滅亡以来、権威を失っていた征夷大将軍の地位をあえて求めず、軍事力を背景に実質的な最高…

イラクとシリア―混迷の近代史(3)

[E:one] 英仏分割統治 英仏は旧オスマン領土のシリア・イラク方面について、戦時中のサイクス・ピコ協定で分割統治を取り決めていたとはいえ、これはなお暫定的な秘密協定にすぎず、その具体化は第一次世界大戦終結後の1920年にイタリアのサンレモで開催…

関東通史―中心⇔辺境(10)

十一 後北条氏の関東支配 享徳の乱後の古河公方が支配する古河府は室町幕府から事実上独立した関東地方政権と化していくが、一方で内紛と分裂に見舞われた。特に第3代古河公方・足利高基とその弟の義明が対立し、義明が1517年に千葉の小弓〔おゆみ〕城…

イラクとシリア―混迷の近代史(2)

[E:zero] オスマン帝国崩壊 イラクとシリアはイスラーム化以前はもちろん、以後も各々固有の歴史を持つが、オスマン帝国の全盛期であった16世紀から17世紀にかけて相次いでオスマン領土に編入されたことで、形式上は一つの「国」となった(地方行政区分…

関東通史―中心⇔辺境(9)

十 古河公方の「独立」 京都の室町幕府と鎌倉府が並立する「東西幕府」体制は、第4代鎌倉公方・足利持氏が幕府の権威を背景に鎌倉府をもしのぐ実力を備えるに至った関東管領・上杉氏及び室町幕府と対立・敗北し(永享の乱)、鎌倉府がいったん廃止されたこ…

イラクとシリア―混迷の近代史(1)

序説 21世紀の幕開けとなった9・11事件以後、開始された「テロとの戦い」が「「イスラーム国」との戦い」に拡大しようとしている現在、主戦場はアフガニスタンというイスラーム世界ではどちらかと言えば辺境の地からイラクとシリアというイスラームの本…

関東通史―中心⇔辺境(8)

九 「東西幕府」の時代 執権北条氏に乗っ取られた鎌倉幕府体制は、承久の乱での勝利により一応全国支配を確立するが、元寇という空前の「有事」対応を機に、北条得宗の独裁が強まり、御家人層の不満が募っていく。 そうした機会をとらえ、閉塞していた朝廷勢…