歴史の余白

内外の埋もれた歴史を再発見するブログ

2016-10-01から1ヶ月間の記事一覧

私家版琉球国王列伝(連載第3回)

三 尚金福王(1398年‐1453年) 尚金福王は先代の甥尚思達王が継嗣を残さず没したために、王位に就くことになった。彼の四年ほどの在位中の事績としては、明使を迎えるために、港として整備した那覇と王城のある首里を結ぶ堤道として長紅堤を築造した…

関東代官伊奈氏列伝(連載第4回)

三 伊奈忠克(1617年‐1665年)/忠常(1649年‐1680年) 伊奈忠克は、先代忠治の嫡男として関東代官職を継承した。前回も見たとおり、関東代官伊奈氏は父忠治の代で確立され、「関東郡代」を私称するまでに強勢化していた。忠克はそうした伊…

弥助とガンニバル(連載第4回)

三 大航海と奴隷貿易 アッバース朝からオスマン帝国へと引き継がれ、確立されたアフリカ奴隷貿易システムに対する対抗者として現れたのが大航海時代を迎えた西欧である。ポルトガルが先陣を切った。アントン・ゴンサルベスなる15世紀のポルトガル人航海者…

仏教と政治―史的総覧(連載第21回)

七 日本仏教と政治 武家仏教と民衆仏教 平安時代末期の平安ではなくなった時代、平安貴族らはこぞって浄土教に走り、来世での冥福を願ったが、現世での幸福はかなわず、かれらが権力保持のために依存するようになった武士層の増長を抑えることはできなかった…

私家版琉球国王列伝(連載第2回)

一 尚思紹王(1354年‐1421年)/尚巴志王(1372年‐1439年) 尚思紹・尚巴志父子は、琉球を初めて統一した第一尚氏王朝の創始者とされているが、厳密には父尚思紹王の代では統一は完成しておらず、統一は2代目尚巴志王の功績である。尚思紹…

関東代官伊奈氏列伝(連載第3回)

二 伊奈忠治(1592年‐1653年) 伊奈忠治は関東代官初代忠次の次男として生まれたが、元和四年(1618年)の兄忠政の死後、小室藩主家を継いだ幼少の甥忠勝と分離する形で代官職を継ぎ、父兄の土木事業を継承した。忠治最大の事績は利根川付替え事…

弥助とガンニバル(連載第3回)

二 オスマン帝国と奴隷制 イスラーム世界における奴隷制はやがてイスラーム世界の覇者となったオスマン帝国に継承され、より大々的かつ体系的に制度化される。 帝国の奴隷制には、主としてコーカサス・東欧方面から調達される白人系奴隷と、従来のザンジュ奴…

関東代官伊奈氏列伝(連載第2回)

一 伊奈忠次(1550年‐1610年)/忠政(1585年‐1618年)/忠勝(1611年‐1619年) 伊奈忠次は、関東代官伊奈氏の初代に当たる人物である。彼は伊奈氏が信州から三河に移住して四世代目に相当するが、父忠家は嫡男ではなく、本宗家筋で…

私家版琉球国王列伝(連載第1回)

序 近年の沖縄県の話題と言えば「基地問題」が圧倒的であり、王国時代の琉球史が本土で顧みられることはほとんどない。当の沖縄でも王国時代は過去の歴史となり、日本領土の一部たる「沖縄県」であることは当然の前提となっているように見える。 しかし、琉…