歴史の余白

内外の埋もれた歴史を再発見するブログ

赤穂浪士事件起承転結(連載第1回)

小序

 
 今日は赤穂浪士による吉良邸討ち入り事件の310周年である。本来なら300周年の2003年1月30日(旧暦では元禄十五年十二月十四日)のほうが時宜にかなっていたであろうが、2003年当時の筆者はウェブ初心者で、ブログという言葉すら知らなかったから、半端ではあるが、310周年を機とした。
 本事件をめぐっては、その事の起こりからして史実上不明な点が多く、主として文芸作品を通じて伝承された面が強い。本連載はそうした文芸赤穂事件からは一線を画し、史実としての赤穂浪士事件について、その事の起こりから結末までを起承転結の四段階に分けて独自に考察し、その歴史的な意義について、改めて再考する。

 
 まず〈起〉では、事件の発端となった浅野内匠頭吉良上野介の対立関係について、これを個人間の対立問題にとどめず、高家旗本と地方外様大名の階級的な力関係という観点から、把握し直す。
 次いで〈承〉では、なぜほかでもない浅野内匠頭江戸城中での刃傷沙汰という行動に及んだのか、浅野氏と浅野氏が治めた赤穂藩という舞台の特質に焦点を当てる。
 続いて〈転〉では、内匠頭処刑と改易処分後の赤穂浪士が太平の時代にあえて戦めいた討ち入りという古風な集団行動に及んだ経緯及びその行動の政治的及び歴史的な意味について考察する。
 最後に〈結〉では、幕府による浪士処刑のみならず、吉良家に対しても高家としての改易という厳罰処分を下した幕府の最終処置が持つ政治政策的な意味について考察する。