歴史の余白

内外の埋もれた歴史を再発見するブログ

2012-01-01から1年間の記事一覧

天皇の誕生(連載第9回)

第三章 4世紀の倭 4世紀の倭の情報は中国の史書から消え、「謎の4世紀」とも言われる。しかし、朝鮮史料の『三国史記』や『広開土王陵碑文』などから、この時期の倭が朝鮮三国と活発な外交的・軍事的駆け引きを繰り広げる様子が窺える。この「倭」は果た…

天皇の誕生(連載第8回)

第二章 「神武東征」の新解釈 (5)「神武天皇」の分割 東征勢力の首領 ここで、「神武天皇」とは何者であるのかという初めの問いに戻ってみよう。 『記紀』は「神武天皇」を東征からヤマト征服、王朝樹立までの一連のプロセスの主人公として統一し、英雄物…

天皇の誕生(連載第7回)

第二章 「神武東征」の新解釈 (4)二系統の天孫族 「神武東征」の経路 神武軍団の出発地点について、正史・通説の「宮崎日向説」に立つと、かれらは宮崎の日向を出てまず九州東岸を舟で北上し、宇佐を経て筑紫国の岡水門[おかのみなと](遠賀川河口付近…

天皇の誕生(連載第6回)

第二章 「神武東征」の新解釈 (3)天孫族の渡来 渡来の時期 前回見たように、天孫降臨神話に形象化された加耶系集団の渡来時期はいつごろのことなのであろうか。この問いに正確な解答を出すのは難しい。 一つのかすかな手がかりは、金官加耶国開祖・金首露…

天皇の誕生(連載第5回)

第二章 「神武東征」の新解釈 (2)天孫族の出自 降臨神話の真相 天孫ニニギは高天原から「筑紫の日向」に天降った。そして、その曾孫に当たる神武はそこから畿内に東征する━。 こう推定してみたいのだが、それにしても天孫が文字どおりに天から降ったので…

天皇の誕生(連載第4回)

第二章 「神武東征」の新解釈 南九州の日向から、軍団を率いて畿内へ侵入し、大和朝廷を建てたとされる「天神」の子・初代神武天皇の東征は単なる神話なのか、それともそこには何らかの史実が投影されているのであろうか。 (1)「神武東征」の出発地 宮崎…

天皇の誕生(連載第3回)

第一章 三人の「神冠天皇」 (3)応神天皇と八幡宮 皇大神としての八幡神 応神天皇が新王朝開祖であるらしいことは、宗教の面からも確認することができる。まさに応神天皇を祭神として祀っている八幡宮の存在である。宇佐八幡宮(宇佐神宮)を総本社とする…

天皇の誕生(連載第2回)

第一章 三人の「神冠天皇」8世紀に、漢学者・漢詩人の淡海三船[おうみのみふね]が撰じた歴代天皇の漢風諡号の中で、「神」を冠せられたのは初代神武・第10代崇神、第15代応神の三天皇だけである。このことは、8世紀の時点でも、三天皇が特別に神聖視…

天皇の誕生(連載第1回)

プロローグ 「天皇の誕生」というテーマは、正史・通説の立場からすれば、さしあたりは『古事記』(以下、『記』)及び『日本書紀』(以下、『書紀』)を参照のこと、と言うだけで済んでしまう。果たしてそれによると━ 天皇の祖は、皇祖神・天照大神[アマテ…